せいら
「比類なき華」
まず、明かりを灯すことから始めるんです。秘密倶楽部のプレイルームは薄暗いから、お客さんに少しでも安心してもらえるように、
ローソクの火は常に絶やさないようにしているんです。
暗闇の中でぽっと照らす光が、呼吸を深く導いてくれる気がして、
私自身もリラックスできる。気持ちが安定するんです。
プレイルームの家具の配置にも意識をしています。椅子の場所はここに、畳んだタオルはあの場所へ……
すごく神経質にはならないけれど、部屋の模様は自分なりのルールがあって、よく整頓しているんです。
居心地のいい空間を演出するのは心が整う気がして、癖になっています。
片付けることは好きですね。プライベートでも掃除はよくしているんです。
きれいな場所に住むのが好きだから、まめな努力が美の秘訣、人に任せたりしないで、自力で全部やっています。
忘れてはいけないのが化粧室、あそこは私のオアシスでもあるから、念入りにきれいにしています。
狭い密室だからこそ、落ち着ける場所にしたいんです。
自分の気持ちを真っ直ぐに
お仕事で演技はしていません。試みようとしたことはあったのですが、違和感があってできなかったんです。
そこで私なりの判断を下しました。私は、自分とかけ離れた存在になるよりも、素の状態でお客さんと過ごしているほうがプレイ自体も盛り上がる性分みたいです。
お互いが子どもみたいになって明るくじゃれあったり、視線を絡ませて触れ合ったり、自然なノリでマイペースに、時間を過ごしていくほうが性に合っている気がします。
無理なく自然に、のびのびと、甘えられるのは特に好きです。疲れ切っているお客さんの身体を温めて、優しくなでてあげたり、そっと包み込んであげたり、
そうしたお世話をしてあげている時間は私自身の幸せのひとときとなるんです。
ドレスで艶やかに
衣装を褒めてもらえるのもうれしい瞬間です。暗い中でも、ちゃんと自分自身の姿を見てもらえていると、俄然やる気が起こります。
あとは「おでこ」がうれしい。きれいな卵みたいだねって、よく触れてもらえるポイントなんです。
馴染みのお客さんにつつかれて、たまに、いたずらされてしまうときがあるんですけど、お愛想です。それもうれしい。
新しい扉に怯まないで
方針として、好きなことは尋ねないようにしているんです。
お客さんの気持ちがいいと感じる場所は、私自身で見つけていってあげたいから、あえて聞かないようにしているんです。
触れていけばわかるもの。敏感な場所を探り当てたときは気持ちがぐんと高まりますね。
秘境は隠れているものだから、他の場所と比べると、反応が明らかに違うところがあって、自らそこを解き明かしていくのがいいんです。
お楽しみはおあずけです。私がそこへいくまで、お客さんには期待しながら待っていてほしい。
この広い世界にはこんなにも気持ちのいいものがあるんだよって、教えてあげたいんです。
快感を、知らないままにしておくのは絶対に損。自分の中に秘められた、未知な場所に恐怖心が起こるのはわかるけれど、その奥に存在する最大の気持ち良さ、
私の手を通じて授けてあげたい。きっかけとなりたいです。
2011.10.14 フリーライター 竹中陽子